婚前契約全般

妻が婚前契約書を作る気持ちになる方法

みなさんが、婚前契約書を作ろうとしたとき、相手方配偶者の承諾と協力がなければなりません。

相手方が乗り気でなければ、その気にさせなければなりませんが多くの場合、困難を伴います。

例えば、双方が経済的に自立している場合には、妻側においても、将来自分の財産を夫側に分与するようなケースが想定されることから、内容はかなり夫にとってシビアになる傾向にあるものの、良くも悪くも婚前契約書の作成はスムーズに進みます。

一方、本ブログが想定しているような稼ぐ中小企業のオーナーの場合、女性側の同意を得るのに骨を折るケースが多いです。

まず、妻側が全く乗り気ではなかった事案について紹介しますと、何年か前、地方の建設業の40代オーナーの婚前契約書の作成を依頼を受けたことがありました。

妻となる者は20代前半の女性でしたが、思考作業がとにかく苦手な方で、話を進めるのに大きなハードルがありました。(婚前契約書は契約締結時に双方が内容をよく理解し、相手方の思慮の浅さに乗じて作成することはあってはなりません。)

①下記の事項についての理解が困難であった(知的レベルの問題)

ア 婚前契約書の法律効果

イ 金融資産の種類(商品概要)、数額、評価

 

②説明を聞かない、理解しようとしない態度(意欲の問題)

上記ケースでは、知識的な問題が大きなハードルでした。

もっとも、上記ケースでは、女性側に、金融の知識・夫婦間に起きうる法律問題に関する最低限の知識がなかったことが問題なのであって、理解さえできれば、婚前契約書の作成を承諾する事案であろうと考えられました。

そこで、女性に対しては、家族法に関する一般的な知識の説明、金融商品の概要、有限会社の持分に関する考え方、特に、依頼者の家族構成(創業者は依頼者の父であるところ、依頼者(長男)が持分を割合的に多く保有しているものの、兄弟姉妹による会社の所有意識が強い会社であること)、婚前契約書の一般的な法的効果、当方が用意したドラフトが通常の夫婦ではなされない財産分与の前渡的給付条項や清算条項が含まれていることについて慎重に説明をしました。

これにより、女性は内容をよく理解し、私署証書認証までこぎつけることができました。

このケースがうまくいった理由としては、婚前契約書のメリットやデメリットはもちろん、民法の条文、契約の法律効果をわかりやすく説明をしたことにつきます。

また、離婚事件で養育費を計算する際によく作成するライフプランニング計算書(資産チャート)を活用して、彼女自身の固有資産に関するライフプランニングを行ったことも効果的だったと思います。

離婚する際の財産状況を視覚的に示すことができたことが彼女の理解につながったと感じます。

次に、婚前契約書の意義について理解できているものの、婚前契約書を作成する気持ちがない女性の事案です。

多くの例では、「顧問弁護士or税理士が作れとうるさいから・・・」とか「会社の株式は相続で分散するとよくないから遺言(信託)で、次の経営者候補に引き継ぎたいから・・・」等と説明すれば、会社の株式及びその増加した評価益を分与財産から除外することについて承諾を得られるケースは多いです。

しかし、上記のような説得ではうまくいかない事案がありました。

女性がとても強い人で「なんであんたの判断できめきらんのか」等といわれ、仕業のせいにすると一層怒りを買い、かなり骨を折りました。

依頼者は同じく中小企業の50代オーナー(前婚なし、子なし)で、相手女性は前婚のある40代女性、出会は飲み屋で意気投合という事案です。

女性側の言い分から感じた女性の意識は次のとおりです。

①婚前契約の意義は理解しているが作る気持ちがない。

②婚前契約書の作成を求められることについて、夫となる者から、何等か警戒されているのではないかと感じている。

このような事案では、最初から弁護士等の専門職が前にでると女性側が一層警戒する可能性もあります。そこで、当初窓口は男性が行い、説明を尽すようにしました。ただし、嘘を含まないように注意を払います。

会社の財務状況について説明する。

ア 会社決算書 借入金残高

イ 経営者保証(連帯保証)

ウ その他隠れた債務など会社特有の状況

上記事情について説明したうえで、会社経営上のリスクを漠然とでも伝えることで、婚前契約書による財産関係の整理のメリットを伝え、興味を持ってもらえる可能性が生まれます。

しかし、説明の仕方等を誤ったり嘘の事情が含まれると、将来、契約の取消事由となりうることから、リスクがないわけではありません。(あくまでも会社の株式に関する正しい価値を知ってもらい、経営者保証に関する種々のリスクを説明するイメージです。)

女性側が、興味をもった段階で弁護士に引き継ぐとよいと思います。

 

そのほか、IPO前の会社オーナーの場合は、離婚配偶者に株が分散することが株主間契約に違反する可能性があることや、CVCとの間にも株式にまつわる複雑な法律関係がある旨を説明に取り入れるとよいと思います。(そもそも、私の経験上ベンチャー経営者のつくる婚前契約書作成において、妻側が難色を示すケースはかなり少ないです。)

問題は、婚前契約書を作ることに承諾を得られたのであれば、次は、どのような婚前契約書にを作るか、権利濫用的ととられないような条項を作り込むことに時間とエネルギーを注ぐ必要があります。