40~50代向け

相続に関する事項について記載する際の注意 5つ

婚前契約書には、婚姻関係に関する事項、相続に関する事項等記載することができるといわれることがありますが、可能であれば、婚姻関係に関する事項に絞って記載した方がよいです。

相続に関する事項に触れるとしても「甲及び乙は、適宜、将来の相続に備えて遺言公正証書を作成しておく」などの抽象的な記載にとどめておくのが良いと思います。

相続に関する事項について踏み込んで記載したものをみると、共有財産やそれぞれの特有財産を具体的に示しつつ、具体的な遺産分割の方法が示されているケースがあります。

中には、夫婦それぞれが、「互いの遺産相続に関して相続放棄をする」旨の遺言が記載されているケースもありますが、個人的には、おすすめはしません。

では、そもそも、そのような相続に関する定めはどこまで有効なのでしょうか。

まず、相続に関する記載が、それが遺言としての機能を十分に果たすかという点から考えてみたいと思います。

確かに、積極的に財産を移転するような定め、たとえば、生前贈与としての効力や、遺贈としての効力は認められる可能性があります。書面によって、贈与を受ける側による承諾の意思表示についてもフォローしておけば、より一層効力は高まるでしょう。(なお、余談ですが、そのような遺言をする場合には、持ち戻しの免除をしておかないと、相手に不測の不利益を与えることになりますので、安易な遺言はしない方がいいです。また、遺言であるとした場合、同契約書を破棄した場合は遺言の隠匿等になるかどうか、判断は難しいのではないでしょうか。)

訴訟等で生前贈与の効力が争われた事案では、承諾の意思表示が認定できないため効力が否定されることがありますので、注意が必要です。

一方、内容次第では、効力は不安定になってしまうと考えていたほうが良い事案もあります。

例えば、前婚のある夫婦であって、前婚の子に対する配慮から、互いの相続については、相続を主張しない旨の記載がなされた場合などが考えられます。

過去の裁判例を見ますと、親子間の相続に関してですが、生前の相続放棄に関する合意については否定されていますし、それは、夫婦についても、当てはまると考えられます。

このような記載は、効力を持たないと考えたほうが無難でしょう。

るいは、一方が死亡した場合、死亡配偶者は共有財産に関する持分権を死亡と同時に放棄するという、条項もありうるでしょう。個人的には有効な条項であると思いますが、実際に妻の相続が開始すると、夫名義であろうが妻名義であろうが夫婦共有財産について、妻の相続人が相続分(連れ子である場合は、2分の1の範囲)を主張して、紛争となるケースも想定されます。

そうなると、裁判所としては、死亡配偶者の「遺産の範囲」を争点として、当事者に主張立証を行わせ、判断することになります。(この意味でも、双方の特有財産の範囲、共有財産(死亡配偶者の持分部分)を範囲を明らかにしておく必要はあります。)。

以上は、離婚してない状態で妻の相続が開始した事案に関する議論です。似たような論点として、元配偶者死亡後、財産分与未了の状態における財産分与請求権の相続性という論点がありますが、この問題は別稿に譲ります。(追記2021.7.28)

そもそも、若いカップル、初婚のカップルであれば、夫婦間契約において相続について触れるということはあまり想定されません。この問題は特に、再婚カップルが注意すべき問題であると思います。

この問題を考える視点としては、以下の5つであると思います。なお、5つ目については、遺言の破棄・隠匿や、配偶者の認知症の問題にも関わる問題です。

仮に、夫婦財産契約において重大な遺言事項が記載されていた場合、これを破棄した場合には、遺言の破棄隠匿と非難される可能性はないではありません。個人的には、婚前契約書が自筆証書遺言にあたることはないと考えていますが、紛争を招く可能性がありうると考えます。(少なくとも遺産分割の方法的な記載があれば、子らとしては、内容を開示するよう求めてくる可能性があり、余計な紛争が生じます。)

認知症と離婚の問題は別稿にしたいと思います。

1 互いに相続放棄を定めるような夫婦間の相続に関する契約(相続契約)は夫婦間において無効になる可能性が高いこと

2 1が有効であるとしても、前婚の子との間では、別途遺言がなければ、余計な紛争を招く可能性があること

3 生前贈与、遺贈に関する定めた場合、相手に不測の不利益を与える可能性があること(遺産分割方法の指定をする際の問題点です)

4 夫婦間契約が遺言であるとすると、破棄隠匿で、相続する権利を失うことになるのか。(これはよくわかりませんが、遺言に当たるのであれば、他の相続人からクレームが出るのでしょう)

5 夫婦間契約書の存在、その保管場所について、子に知らせておくこと

以上のとおり、相続に関しては、いろいろなハードルがありますので、相続については遺言公正証書として残した方がよいと思います。