40~50代向け

再婚の準備

40代以降の男性が再婚しようとするとき、頭によぎるのが、後妻と実子との関係であることが多いです。

先妻との離婚後、子(特に成人の子)と交流があるとき、その子は、再婚による父親の財産の流出を懸念して、再婚に賛成してくれないというケースが多く、子供に賛成してほしい、或いは後押ししてほしいというのであれば、子が感じている種々の不安を解消すべく次のことに留意していただければよいのではないかと思います。

先妻との間の財産分与が完了していること

協議離婚が成立したものの先妻との財産分与協議又はその履行が未了であるのであれば、財産分与を済ませたのち再婚をされた方がよいと思われます。

この時点における子の不安ごとは次のようなものだと思われます。

①実母をさし置いて再婚すること自体に対する憤り

②父が居住用不動産を取得した場合、後妻が住むようになり実家を喪失することへの憤り

③相続が開始すれば父の財産の大部分を採られてしまうのではないかという不安

なお、資産ある男性の離婚の場合、居住用不動産を先妻に取得させないというケースは少なく、先妻が不動産を取得するケースは多い印象ですが、その際、特有財産たる不動産を譲渡する際は譲渡所得税のリスクが伴いますので、注意が必要です。

後妻との離婚に備えて、婚前契約書を締結すること

後妻との間で婚前契約書を締結することができれば、仮に、再婚が離婚にいたったときであっても父親財産の大半が後妻に流れることはなくなりますので、子供たちは安心すると思われます。

後妻が夫となる者の特有財産に権利を主張する隠れた紛争としては、名義株の問題があります。

この点については後日別稿にしたいと思いますが、経営者たる夫が、出資の際に子名義の名義株にしていた場合です。

最高裁の判例によると、他人の承諾を得てその名義を用い株式を引受けた場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の引受人すなわち名義借用者がその株主となるものと解するのが相当である(最高裁判例昭和42年11月17日)と判断されています。

すなわち、名義株の真実の権利者は、名義借りをしていた夫(父親)であるのですが、相続開始後、名義株の権利が誰に帰属すべきであるのかで争いになるケースがあります。

名義貸しをしている子としては、株式は自分名義であるから安心しているのですが、相続開始後、名義株は真実は夫の相続財産であるとの後妻の主張があったときには、反論に窮する場合があります。

名義株については、夫の生前に実質的に名義を移転させるか或いは、夫において、名義株である旨正式に認めた上で形式的な名義人である子に相続させる旨遺言を行うなどの対策が必要です。

①夫婦別産制を採用することはもちろん、夫が実業家としての稼得能力において特別な才能や能力を有していることを前提に、共有財産の範囲を限定する内容であること

②退職金分割、社会保障給付たる年金分割について、後妻が権利主張しない旨定めていること(給与所得者の場合は特に、役職定年等しているのであれば、婚姻前に現金化しておくと良いと思われます。)

なお、年金分割について、平成20年4月1日以降の厚生年金については3号分割(いわゆる当然分割)といって、請求があれば当然に2分の1が妻の帰属する制度設計に代わっていますので、この部分について、当然分割を請求しない旨の設計しなおす必要があります。

後妻との間の経済的協力関係をあまりに蔑ろにするような婚前契約の内容は、後妻との夫婦関係に悪影響になるばかりか、婚前契約の有効性に疑義が生じるときがあるため、注意が必要です。

 

後妻に対して特有財産たる家の贈与は避けた方がよい

会社経営者が、後妻との関係が良好な間に、後妻の将来を思って特有財産たる不動産を贈与するケースはまま見られます。この場合、将来、実子と後妻との間で紛争になる場合が多いです。まず、移転した不動産の性質によっては、先妻の子の反発が大きい場合も見られます。

これまで私が経験した後妻の視点からみてよくない移転例としては、夫(父親)が生前に後妻に対して不動産を贈与(特有財産の生前贈与)し、遺言を作成せず死亡したケースで不動産の贈与について持戻し免除の意思表示があったのか否か不明なであった場合です。この場合、後妻としては、不動産価格が法定相続分に達しているような場合には、不動産以外に取得できず、現預金を相続することができなくなる場合が多いです。

先妻の子の視点からよくない例としては、上記のような不動産の生前贈与が行われたケースで、持ち戻しの免除の遺言が作成されていたり、不動産の名義移転後も夫から妻宛てに財産の移転が継続的になれ黙示に持ち戻しの免除が推認されるような場合には、調停において、後妻から持ち戻し免除の意思表示があったなどと主張を招きます。

後妻との婚姻関係が相続開始まで続くのであれば、後妻に居住用不動産を相続させ最低限の現預金を採らせる旨の遺言によって後妻の生活保護という目的は達成できるわけですから、税務上のメリットはともかくとして、婚姻期間中の不動産の贈与は極力避けたほうがよい印象です。

後妻との間の婚前契約書は子に存在を知らせておくこと、同時に遺言公正証書を作成しておくこと

後妻と結婚をする場合は、婚前契約書と遺言公正証書はセットと考えて頂いてよいと思います。婚前契約書の中に遺言を兼ねるというものもありますが、基本的には、婚前契約書で遺言はできないと考えたほうが安全だと思います。

婚前契約書は後妻との離婚を想定してつくるもの、遺言は後妻と死別するときを想定して作るものと明確に区別して考えてよいと思います。

まず、子に婚前契約書の存在は知らせていたほうがよいという点ですが、夫と後妻との間の契約内容は、子供たちが積極的に知る機会はなく、夫が亡くなるときまで(或いは亡くなったあとでも)子供たちは存在をしらなかったということもあり得ます。

極端な例ですが、夫が重度の認知症になり、妻側から、成年後見人の選任をしたうえで、離婚訴訟でも起こされるようなケースでは、婚前契約書とは異なる内容の財産分与がなされることになりかねません。成年後見人となった者は、婚前契約の存在を知る機会はありません。成年後見人は、本人と同じ立場で訴訟追行を行いますから、婚前契約書があるのであれば、その内容に沿って主張立証することになると思われます。

この点で、子が契約の存在を知っておく必要は高いと考えます。

余談ですが、婚前契約書があるのであれば、夫婦共有財産は生活を維持するに必要十分な金額に抑えられているものと思われ、加えて、婚前契約書が妻の家事労働、夫への貢献を一切無視するような内容にならないよう妻の固有財産を補填する趣旨での給付等フォローは欠かせないと考えます。(但しこの給付の決め方が難しい。)

将来、後妻と円満な離婚ができない場合に備え、婚前契約の内容に沿って財産分与することに応じてもらえないケースを想定しつつ、作成された方がよいと思います。

何れにしても、婚前契約書だけでは相続開始後についてフォローすることはできませんので、後妻との間の共有財産(2分の1持分)及び夫名義の財産(特有財産)の相続について、再婚後、速やかに遺言をされたほうが良いです。